一章 廻り合わせのゴラル

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 私は取り敢えず振り返って校舎内を見てみるが人がいまだ多いので、誰が私のことを見ていたのかはわからない。  それに、もしかしたら先ほど感じた視線は私ではなく、別の誰かを見ていたのをたまたま私が感じ取ったのかもしれない。  なら、無理に気にする必要もないだろう。  私はそう判断し、この事を頭の隅へと追いやり、足早に帰路に就いた。  ──翌日。  教室に到着し、中に入ると違和感を覚えた。  ──違和感? いや、そうじゃない。すでに登校しているクラスメイトたちはいつもと変わりないのだが、教室の片隅──あてがわれた席で読書に耽ている転校生──が異彩を放っていたのだ。  昨日と同じく公立高校の制服に昨日は無かったウチの学校の生徒である事を証明するモノと思われる腕章を付けている。  二学期もあと僅かだからか、もしくは端からウチの学校の制服を用意するつもりがないのかもしれない。  まあ、高校生活も実質的にあと二ヶ月ほど。三年は二月から卒業式の日の三日前までは基本自由登校になるので、僅かな期間しか着用しないのに、その為に制服を用意するのは勿体ないといったところだろう。
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