一章 廻り合わせのゴラル

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 各々、弁当やコンビニ飯をひろげ、談笑をはさみながら昼飯を食す。 「──……そういや、昨日の帰りにストーキングされてよ。肝を冷やしたぜ」 「マジか!? まだ居たんだんな。彩歌のこと狙ってる奴──」  ──姫百合彩歌(ひめゆりさいか)は私の幼馴染みで、自他共に認める美少女だ。  しかし、言葉遣いが見た目に違う乱暴なものなため、変な誤解を他人に与えてしまうのが玉に瑕なのだ。  その所為で、彼女の印象には“見た目美少女、中身は──”的なあらぬ謳い文句までも付けられてしまったりしている。  かつて、私を含む彼女の周りの人間が総じて、節目節目に「言葉遣いを変えたほうがよい」と助言したのだが、いまだに言葉遣いを変える兆しはない。 「──で、どんな奴だったんだ?」 「……うーん……あめっちが言った通りの俺に好意を持った奴だったら幾分かマシだったんだが……」  彩歌は私の問いに、なにやら煮え切れない態度をしめした。 「……もしかして、ヤバイ奴だったりしたのか?」 「…………ああ。アレはマジで──ヤバイ。付けれているのに気付いて、振り返ったときに目が合ったんだが、目が合っただけで言い様のねえ悪寒がしやがった」  彩歌はそのときの感情を思い出したのか、暖房が効いていて暖かい休憩スペース内なのに、身震いをした。  ──一体、目が合っただけで人を恐怖させる人物とは何者なのだろうか?
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