一章 廻り合わせのゴラル

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 それなら、意味不明な転校の謎も頷ける。  何しろ、転校生は都市伝説のネタになるような奇行を夜な夜な繰り返しているそうだから、常人にはわからない理由で行動に出ているのだろう。  ならば、私が高一の夏──魔法のチカラを得て間もない頃──に遭遇した妄想魔法の使い手の時の二の舞にならないようにこちらからは一切接触せず、無視をきめこめば、いずれ転校生は諦めて夢野姉妹や彩歌を付け回すのをやめるだろう。  私はそうであることを切に願う。 「そういえば、転校生の目的──確証はないけどね──はだいたい見当は付いてるけどさ、何であたしたちを付け回すにいたったのかしら? そこが、未だに解せないわ」  希は解けない謎の部分に頭を傾げる。 「希さん、それなら僕の方で調べがついています」 「──そうなの!? なら、転校生は何故あたしたちに目を付けたの?」  まったく答えを見出だせない希のところに、横手からやっしーが手を差し伸べる。 「それは“魔力の残滓”です」 「“魔力の残滓”?」 「はい、そうです。例えるなら、魔力の残り香と言ったところでしょうか。  そもそも魔力とは『協会』の見解では、場所によっての密度の差はあれど、何処にでもある暗黒物質の一種であると定義しています。  そんな魔力は動植物はおろか非生物であっても其処に自我ないし意思のようなものが宿っているモノに一定時間以上接触していると、接触したモノから離れても短時間の間はいわゆる接触したモノの匂いが残ります。それが“魔力の残滓”です。
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