ぷろろーぐ

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「──……“アレ”はいったい、どういう理由(わけ)なんだ?」 「郁美よ、“アレ”とは何だ?」  天魚め、シラを切るつもりか? 「《門》が砕け散る前に“《門》の向こう側が閃光(ひかり)に呑み込まれた”理由(わけ)だよ!」 「……ふむ、その事か。“アレ”は単にあの娘が帰属する世界が妄想魔法による侵蝕から本来の正常な常態に戻る際に生じた“いわゆる正常な世界と妄想魔法で生み出された世界との摩擦熱のようなもの”が解放された故の人為的事故だ」  ──……え? 「…………それって、まさか──!?」 「──そう、そなたが思った通り、そなたらが起こした奇跡により起こった事。だが、気に病むことはない。むしろ、あちらの世界からしたら最悪の被害が出なかっただけでも御の字であろう」 「それって……──どういう意味?」 「以前に妄想魔法の厄介さとその弱点を話したであろう?」 「ああ」  確か……妄想魔法は段階が進行すると空間そのものを侵蝕するようになり、その侵蝕された空間内では妄想魔法の術者にとって“術者自身が意識的・無意識的に拘らず望む都合が現実を無視して顕現する”という性質を有する。そして、妄想魔法はその侵蝕した空間内部に特化した性質ゆえに“外部からの干渉に脆い”という性質を併せ持つ。だから、初期段階の妄想魔法は“打ち消しの魔法”でいとも簡単に無効化できたのだ。
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