39人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
料理がもっぱら、普通であると噂のPrivateSUN。
「しゃーないやん。普通な俺がつくってんねんから」
苦笑いを通り越して、苦いだけの表情を浮かべた彼こそ、PrivateSUNフード担当のユキだ。
「あたしは好きだけどね」
頬杖をついて、ルイが本日のチャームの味見をしている。
本日はキノコとパプリカの煮ごこりのようだ。
ルイの隣では、すでに焼酎をあおった本日非番の小説家が眉を顰めた。
「ユキの料理はね。これはただの先入観もあるかもしれないが、イラっとするんだよ」
「なんでやねん」
「ほら。前さ、風邪ひいた時に、おかゆつくってくれたことあるじゃん」
「そんなことあったの??」
初耳の出来事にルイは目を丸くしている。
「うん。もちろん、頼んでないけど」
ユキが視線を窓の外に逃がした。
ほんのり色づき始めたサーモンピンクの空に、ビルが飲み込まれていく。
「あんときもさ。青のりがかかってたのよね。こう、真ん中にちょろっと」
ミサキが小さな掌をお茶碗の形にしてみせた。
「あれが、無性にイラっとしたわ」
清々しいほど正々堂々とした悪口である。
「おもいやりやろが!」
「重いやりの間違いかもよ」
最初のコメントを投稿しよう!