入れ換わり

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 とある高層マンションの屋上。  このマンションの3階に正志は住んでいる。  普段は屋上への扉は固く閉められているが、正志は『何でも屋』で培った技術で開け、一人でここにいることが多々ある。  無論、管理者にはバレないように。  ここで一人で悩んでいると、考えがいつの間にかまとまっている。  だから今日も、ここで一人悩んでいるようだ。  正志のヘソ辺りの高さの鉄柵に前のめりにもたれ掛かり、物思いにふけている。  サングラスを外し、夜の街の風景を眺める。  そして、深く溜め息をついた。  最近、自分に来る依頼に疑問を感じ始めた正志は、今の自分の在り方に不安を抱いていた。  こんな事をしていて、自分は本当に人の役に立っているのだろうか。  本当に人に頼られるような人間になれるのだろうか。  不安は恐怖に変わり、自身のうちの中で叫び続けている。  その叫びを無理矢理黙らせていると、また新たな不安を生んでしまう。
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