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――落ちている、だ。
屋上には誰も来ないだろうと、マンションの管理人も手入れを怠っていたようで、だいぶ老朽化が進んでいたらしい。
正志が鉄柵にもたれ掛かった瞬間、重みに堪えきれなくなり遂に壊れてしまったようだ。
そして、完全に鉄柵にその身を預けようとしていた正志は手すりと共に落下してしまった。
因(ちな)みに、このマンションは14階建てだ。
落下中に空気に包まれているような感覚を味わっている最中、正志は今までの様々な記憶が映像として浮かび上がっていた。
故郷の学校で周囲に避けられていたこと、上京してきたこと、初めて依頼をこなして依頼人の笑顔を見たこと、様々なシーンが脳裏を駆け巡る。
自分ですら忘れていたような事も何故か浮かび上がってきて、コレが走馬灯というヤツなのだろうと理解したのは頭部と地面との間が数メートルとなった時だった。
――あ、俺死ぬのか。
何故だか知らないが、頭の中は冷静だった。
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