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(それが、今ではこのザマか……)
溜め息をつく口はないが、内心で深く息を吐いた。
溜め息が引き金になったのか、幼い自分は寝転んだ状態で天井を仰いでいる。
初めて、目が合った。
幼い自分はまるで天井に正志がいる事を知っているかのように、じっと見つめている。
正志に身体があるのならば、全身が強張っていることだろう。
(俺の目つきって、こんなに悪いのかよ……)
改めて思い知らされた。
つり上がった三白眼で、周りを威嚇しているようだ。
周りが避けるのは無理もない。
本当は、他人との関わりを求めていたのに……。
ふと、キッチンにある食卓に目を向けた。
そこにはすでにサランラップで包まれた料理たちが放置されている。
サランラップの内側にはいくつもの水滴が付いており、冷めきっていることが見て分かった。
なぜ、冷める前に食べてしまわなかったのか。
その答えは、すぐに分かった。
他でもない、自分のことなのだから。
――待っていたんだ。
誰でもいい。
一緒にいてくれる人、一緒に食べてくれる人を。
待ち続けていたんだ。
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