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――見つかった。逃げないと。
何故かそんな言葉が浮かんだ。
正志はベッドから立ち上がろうちとしたが、思うように身体に力が入らない。
(なんだよこれ……!)
ようやく立ち上がったものの、今度は立ち眩みが起こった。
(どうなってんだ……!?)
掌を額に起き、倒れそうになった自分の身体を何とか支えようとする。
「やっと起きたのね!? 私のことわかる!? 靖子(やすこ)、アナタの母よッ! 皆心配してたんだから! それよりどこか痛くない!? 気持ちが悪いとかはない!?」
いつの間にか目の前にまで接近してきていた女性――靖子は正志の肩を両手でガクガクと揺らし、大声で捲くし立ててきた。
状況を掴めていない正志には女性が何を言ってるのか理解できていない。
しかし、一点だけ気になる言葉があった。
「ちょっと待て。『やっと』って、どういことだ……?」
「だって強輔……」
靖子はようやく口を開いてくれたことに安心したのか、瞳に涙を溜めながらも喜びの表情で正志を見た。
「1ヶ月も眠ってたじゃない」
その言葉に、正志の思考は中断された。
まるで自分が死んだはずの、あの時のように。
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