壊してしまうのは簡単よ 人の関係なんて

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あれは天然なのか、それともワザとなのか。 昔の彼女を思えば天然のような気もするけれど、でもいまはお互いにいい大人なのだ。 もしかしたら、まだ独身の私に対するあてつけなのかも知れない。そんなことを思ったら、なんだかそれが本当のような気がしてきた。 私と再会できて、懐かしいですって? 嘘つけ。 私を見て、自分は幸せだと笑いたかったんじゃないの!? ファミレスの待合席の方に視線を移せば、そこでメイコ先輩が楽しそうに語らってる姿が見える。 なによ? なによ!? なによ!! 今になっても、こんな場所でも、アンタは私をピエロにするって言うのっ!? 「おまたせしましたァ、メキシコ風激辛ホットチリピザでぇす」 「あ、どうも」 ウェイターがヘナヘナと気が抜けるような声で、遅れていた最後の一品を運んできた。 テーブルに置かれたそれは、目にも鮮やかな真っ赤っかなピザだ。 この赤さが只のトマトソースに起因するだけじゃなさそうなのは、具材に大量の赤唐辛子が散らされているのと、立ち上ってくる過激な香りからも明らかだ。 なんだこれ? 見てるだけで涙が出そうになる。 ちなみに注文したのは、もちろんメイコ先輩だ。 ――これ好きなのよねぇ、一緒に食べましょうよ」 そう言って嬉しそうに注文していたけれど、冗談じゃない、全力でお断りします。 そう思いながら、目に痛いピザの皿をテーブルの片隅に押しやろうとしたとき、ふと、いいアイディアが思い浮かんだ。 そうだ、タバスコ大量に追加したれ。 こんなに真っ赤で匂いもキツいのだから、大量にふりかけたところで区別なんかつかないだろうし。 そう思って、私はテーブル備え付けのタバスコの瓶を逆さまにして、ピザにじゃんじゃん振りかけてやった。 彼女が何も知らずにパクついたときの顔が思い浮かぶ。 んっふっふふふ、いい気味だわ。 瓶の中身が半分に減るまで振りかけてやり、何食わぬ顔をして彼女を待つ。 しばらくして、メイコ先輩が戻ってきた。 「待たせちゃって、ごめんね」 「いえいえ、いいんですよ。むしろ私なんか、お邪魔じゃないんですか?」 「邪魔したのはアイツの方よ。重要な話だって言うから時間をとってあげたのに、聞いてみたら“飲みに行こう”ですって。バッカみたい。相変わらずのバカイトっぷりよねぇ」 「ですよね~」
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