懐かしい人

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メイコさんは、私の高校時代の先輩だった。 部活の先輩でもあって、さっぱりした気持ちのいい性格で、面倒見もよくて、それでいて十代の頃から大人っぽくて、みんなから尊敬され、憧れられていた先輩だった。 私だって、一時期は憧れていた。 そう、一時期だけ。 メイコ先輩が部活を引退する二~三ヶ月ぐらい前だったか、ある出来事があって、それ以来私の中での彼女の評価はだいぶ変わってしまった。 ま、ある出来事と言っても、そんなに大した話でもないけれど。 当時、私には片思いしている相手がいた。同じ高校の、同じ部活の男の先輩。 私は、その先輩に思い切って告白して、そして見事に振られてしまったっていう、それだけの話。 「ごめん。俺、好きな人がいるんだ」 付け入る隙のない、断り文句の常套句に一刀両断されて、その日、私はべそべそと泣き続けた。 その時、私に寄り添って励ましてくれたのがメイコ先輩だった。 親しく、親身に、親切に、これでもかって言うくらい、メイコ先輩は私を慰め、励まし、面倒を見てくれた。 「元気出しなさいよ、ミク。アイツの他にいい男なんていっぱいいるわよ。っていうか、なんでアイツなの? イケメンなのは認めるけど、ほかに取り柄って言ったらアイスの早食いぐらいしか思いつかないような奴じゃない」 「言われりゃ、そうですよね~」 「でしょう?」 そうやって二人で相手を無理やりこき下ろして、メイコ先輩は、私を失恋の痛手から立ち直らせようとしてくれた。 まぁ、そこまでなら良かったんだろうけど。 後日、例の男の先輩が好きな人っていうのがメイコ先輩その人で、 んで、私の告白で自分の気持ちに踏ん切りがついちゃったのか、大勢の人間が見ている前で、 「めーちゃぁぁん、好きだァッ。付き合ってください!!」 と、実に男らしい告白をしやがった。 その派手な告白と、それにうろたえ真っ赤になりながら、 「……は、はい…」 と、小さく頷いたメイコ先輩の可愛さは、いまだに母校で語り草になっているそうな。 けれど、校内一の有名カップルになった先輩たちを見る私の目は、すっかりひねくれてしまった。 そりゃないよ、先輩方。これじゃ私の恋は、まるでピエロじゃないの。 おかげで無理やり捨てようとしていた男の先輩への恋心はあっさりと消え去り、メイコ先輩への憧れも、あっさりと傾いてしまった。
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