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私は彼女と一緒に、駅前のファミレスで夕食を摂っていた。
「懐かしいわねぇ、ミク。何年ぶりになるかしら。え、十年ぐらい? やだもう、そんなになっちゃうの」
そう言いながらも、嬉しそうに笑うメイコ先輩。
なんだって私は彼女と一緒にいるのか。
だって、過去の苦い思い出に関わっているからといって、私は別に彼女のことを嫌っているわけじゃないから、久しぶりに会った知り合いに夕食を誘われて断る理由なんか無いじゃない。
だいたいそもそも、あの時だってメイコ先輩に非があったわけじゃなし。
うん、ぜんぜん彼女に非はない。
私が単に恋に空回っていただけの話だ。
……そんなことをいつまでも思い知らされてしまうから、あの時以来、彼女とは距離を置いてしまっただけの話だ。
二人を見ているのが辛くて部活からも遠ざかって、先輩たちの引退と同時に私は退部してしまっていた。
だって、あそこにいるとどうしたって二人の話題が蘇ってしまうから。
そうやって、卒業以来、メイコ先輩どころか部活の仲間とも一度も会うことなく今まで過ごしてきた。
けれど喉元すぎればナントやらというもので、私は久しぶりに再会したメイコ先輩に、嫌悪感や苦手意識よりも、懐かしさを感じていた。
で、彼女に誘われるままホイホイとファミレスについてきたんだけど、注文した料理が来る頃には、私は彼女の誘いに乗ったことを後悔し始めていた。
だって彼女、高校時代の話ばっかりするんだもの!
「ねぇねぇ、後輩のリリィって居たでしょう。あの子、今どうしているか知ってる?」
知らないわよ。こっちはアンタと疎遠になって以来、部活の仲間とも疎遠になっちゃったのだ。
ま、常に人の輪の中心に居たような人から離れりゃ、そうなるのも当然だけれども。
「氷山くんなんて、いまじゃ小学校の先生だものねぇ。でも彼、昔から人に教えるのが上手だったし、天職かもね」
「そうですよね~」
適当に相槌を打ちながら、氷山って誰だっけ? と必死に思い出そうとする。
あぁ、あのひょろ長いメガネか。と、やっと思い出したところで、メイコ先輩はもう次の話題に移ってしまう。
誰それはどうだった、だの、誰それはいまじゃどうで、だの、彼女は高校時代の思い出をひとつひとつ解きほぐすかのように、楽しそうに語っていく。
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