Omni-birth

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「しかし、それにしてもクロスオーバーとは考えましたね。それは確かにマルチバースの構造に近いと言えば近い。マルチバースそのものではないにしても、マルチバースの構造というものを気付かせるには充分でしょう」 その物語が物語られる意味とは。 複数の「わたし」がたゆたう、あるいは複数の「ぼく」がたゆたう、複数の物語で編み上げられた、それ自体が巨大な物語。アンソロジー。 その、解説。演者(interpreter)自身による解説(interpreter)。 「『ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。その一つの星のなかで笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。すると、きみだけが、笑い上戸の星を見るわけさ。』」 彼は存在する。特異点である僕とは違い、しかしそれでも、普遍的に。多くの物語に。あなたの頭の中に。「ぼく」として。 「『ぼく』が僕。『きみ』があなたで、『星』は宇宙(universe)、あるいは物語(universe)のことです」 銀河鉄道は進んでいく。輝く星の海を。星々の集まりの中を。──GALAXYを。 「アンソロジーはギリシャ語で『花束』という意味ですが、」 このお話の終点は近い。それでも旅は終わらない。物語は終わらない。宇宙はまだ続く。 「一説によればその花束は、コスモスという、それはそれはとても色鮮やかな花を集めてできたものだそうです」 あなたの頭の中に広がる物語、小宇宙──ミクロコスモス。 「さようなら、また何度でもお会いしましょう。真実とも虚構とも区別のつかない、想像という宇宙で」 {/spelled}
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