20人が本棚に入れています
本棚に追加
「しかし、それにしてもクロスオーバーとは考えましたね。それは確かにマルチバースの構造に近いと言えば近い。マルチバースそのものではないにしても、マルチバースの構造というものを気付かせるには充分でしょう」
その物語が物語られる意味とは。
複数の「わたし」がたゆたう、あるいは複数の「ぼく」がたゆたう、複数の物語で編み上げられた、それ自体が巨大な物語。アンソロジー。
その、解説。演者(interpreter)自身による解説(interpreter)。
「『ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。その一つの星のなかで笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。すると、きみだけが、笑い上戸の星を見るわけさ。』」
彼は存在する。特異点である僕とは違い、しかしそれでも、普遍的に。多くの物語に。あなたの頭の中に。「ぼく」として。
「『ぼく』が僕。『きみ』があなたで、『星』は宇宙(universe)、あるいは物語(universe)のことです」
銀河鉄道は進んでいく。輝く星の海を。星々の集まりの中を。──GALAXYを。
「アンソロジーはギリシャ語で『花束』という意味ですが、」
このお話の終点は近い。それでも旅は終わらない。物語は終わらない。宇宙はまだ続く。
「一説によればその花束は、コスモスという、それはそれはとても色鮮やかな花を集めてできたものだそうです」
あなたの頭の中に広がる物語、小宇宙──ミクロコスモス。
「さようなら、また何度でもお会いしましょう。真実とも虚構とも区別のつかない、想像という宇宙で」
{/spelled}
最初のコメントを投稿しよう!