Scene 3

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Scene 3

 だが、奇跡は2度起こる。 「チアキチアキチアキチアキチアキッ!」 「いったいどうしたマユマユマユちゃん」  かつて類をみないほどの全力疾走でいつもの空き教室に飛びこんだ私は、手に持っていた冊子を机のうえに思いっきり叩きつける! 「見てよこれ!」 「これって……文芸部の部誌?」 「そう! 3ヶ月に1回発行、図書室に置いてあるから行けば誰でももらえる、文芸部員現在全5人ただし幽霊部員を除くがフリージャンルな文章を寄稿して冊子にした、文芸部の部誌っ!」 「おおう、詳しいねマユちゃん……。で、その部誌がどうしたの? あゆむくんの原稿でも載ってた?」 「Yes! 圧倒的にYesっ!」  夕月先生は商業の世界で活躍しているプロの作家様なので、とうぜん部誌なんぞは歯牙にもかけない……なんてことは全然なく、ほかの部員にまじって普通に毎回寄稿しているようだった。  もちろん私は、夕月先生がクラスメイトだと知ったあの日、まずなによりも先にすべてのバックナンバーを確保。夕月先生の未☆発★表☆短★編を思うぞんぶん堪能させていただきました。非商業だからこそ書けるタイプの夕月作品……はふぅ。  だから、私が今この手に持っている部誌の最新ナンバーにも、夕月先生の原稿は載っている。  とうぜん、私にとってはただそれだけで物凄いことではある。  ではあるのだが、今の私のテンションがどうしようもなく青天井なのは、それだけが理由ではない。 「とにかく読んでみてよこれっ!」 「んー? なになに……?」  問題なのは、夕月先生の原稿の中身だった。  それは、一言でいうなら恋愛小説で、簡単にあらすじを述べるなら。  主人公は、文芸部員の男の子。  ある日彼は、となりの棟の窓から、いつもこちらを見ている女の子の存在に気づく。  その女の子は、男の子に想いを寄せていて。  そして男の子も、女の子のことが大好きで。  けれど、口下手でそのことを言葉にできない2人。  そこで彼は、この状況を小説に書き記すことで、彼女に気持ちを伝えることを思いつく――。 「え……ちょっと、これってまさか」 「だよね!? これってどう見てもまさかだよね!」
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