Scene 1

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「チアキさ、ちょいと根本的なところを聞いてもいい?」 「ん? なあにマユちゃん」 「その、同じクラスの想いびとくん? とやらに一目ぼれしたのって、いつの話だっけ? 大体でいいんだけど」 「あれは忘れもしない、ちょうど5日前のことだよ」 「みじかっ!」  5日前て。Five Days Agoて。  そりゃ忘れもしないだろうよ。おとといの晩ごはんより難易度低いかもだよ。  あと、同じクラスなのに5日前に一目ぼれっていう設定が矛盾している気がするけど、チアキなのでスルーだ。たぶんその日になにかしらチアキの琴線に触れるできごとがあったという意味だろう。 「恋は燃え上がるものなんだよ! 情熱の破壊者なんだよ! あのひとを見た瞬間にビリビリッと来たねー、わたしは」 「え、てことはさ。思い込んだら一直線なチアキ様につきましては、ひょっとすると、その男子と一切会話も交わすことなく、徹頭徹尾ただの片想いのまま告白に突入していたりいたします?」 「いくらなんでも失礼な! 好きになったひとだもん、会話くらいするよ!」 「ほー。たとえば?」 「『ちーす』『お、おはよっ』」  うん、それは完全にただの挨拶だな。それすらどもってるし。 「『ほれ、消しゴム落としたぞ』『あ、あり……っ』」  今度は言えてねぇし! 「『今日の日直だれだっけ? あ、千秋か。じゃあ日誌よろしく』『(頷く)』」  言葉発してすらいねぇ! 「以上、全3回だね」 「すくな!」  会話3回というか、文字通りに3回しか意思疎通してないじゃねーか。  これは想いびとさん、チアキに好意を抱くとか、そういう段階のはるか手前にいらっしゃいますね……。あかんわ。そりゃ振られる。
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