Scene 1

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 ともかく私は、べつに恋愛そのものを否定する気はないが、自分でやる必要性をまったく感じでいないという話だ。しかもしょせんは学生恋愛だしねえ。 「マユちゃんのその発想もたいがい、女子高生として残念な気がするよ……」 「世間様の価値観だとどう見られるかなんて百も承知よ。それでも、私がなにをやりたいかくらいは私が決めるわ」 「その言葉だけ切り取るとカッコいいのに、やってることは本読んでるだけっていうのが哀しいよね」  でも、そうは言うけどさ。未婚率もどんどん上がっているわけだし、いずれは私みたいなのが主流の時代が来るかもよ?(半分くらい本気) 「もったいないと思うけどなぁ……。恋って素晴らしいものだよ?」 「だからぁ。そんなこと言ったらチアキだって読書の素晴らしさを知らないでしょうに」 「んー、そうだ! そんなに本が好きなんだったら、同じく本好きの男のひとなんていいんじゃないかな?」 「ふっ。浅はかね、チアキ」  たしかに、共通の趣味を持っていれば、デートでの会話が弾んだりもするでしょうよ。  だが私は、本の感想は自分の中にとどめておければそれでいいというタイプの読書好き。  それゆえに、デートに行く時間があるなら1冊でも多くの本を読む!  と言ってみたら、チアキに「女子高生として残念を通り越して、ひととして終わってるなぁ……」みたいな目で見られた。む、失敬な。
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