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「じゃ、じゃあさ! 本を読むの逆で、本を書いてるひとならいいんじゃないかな? ほら、ちょうど今、そこの窓から向こうの部室棟をのぞくと、あゆむくんがパソコンでなにか書いてるのが見えるじゃない? あれだったらどう?」
ん? ああ、たしかあの中って文芸部だったっけ。
あゆむ…………あー、同じクラスに、小野 歩(おの あゆむ)って男子がいたなぁ。あんまり目立たないし、接点もなかったから知らなかったけど、文芸部だったんだ。
「それも浅はかね。いい? 私はおもしろい小説が読みたいのであって、小説ならなんだっていいわけじゃないの。ましてや、プロですらない普通の高校生が書いた部活レベルの拙い文章なんて、まったく読みたいとも思わないわけ。わかる?」
「え? でもさ、マユちゃんが持ってるその本……なんとか夕月先生だっけ? 前に好きって言ってなかったっけ」
「好き好き大好き寵愛してるわ」
即答。
「……うん。だったらさ、たしか、その夕月先生って」
「あゆむくんのことだよ」
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