雨後の足跡

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 昨日のように早起きをし、観察の状況を整えて庭へ出た私は、自宅の玄関前を見て愕然とした。  他の場所とは比べ物にならない程たくさんの、赤土色の足跡が、ウチの玄関前にこれでもかと残っていたのだ。  靴らしき跡は一つもない。蹄、肉球、鳥の足。中にはもっと得体の知れないものまでが、その場で足踏みでもしまくったかのように玄関先に残されている。  それを見た途端、私は観察の予定をやめて、出社時刻まで自室へと引きこもった。時間が来て家を出る時も、もう足元は見なかった。  相手が何者なのかは判らないけれど、私の行動は何者かの不興を買う真似事だということは判った。だから警告を受け入れる。  工事の終了期日は迫っている。それがすめば道は元通りだ。もう雨が降っても、赤土色の足跡などつかないだろう。  その日が来るまで、雨上がりの道はもう見ない。この先一生、他の場所でも、見ない。詮索しない。…それでいいよな? 足跡の主達。 雨後の足跡…完
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