第1章

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 そのダンシングフラワーの一人が気になることを言いました。 「今年のハロウィンも終わりかぁ~。ほら、もう昼が迫ってきているよ。」  彼が指で示した方角の先には、青空と明朗な昼下がりの風景が広がっていました。 ナモは目を疑って、今度は彼の指の逆方角を見つめます。 そこにはまだ暗闇と、怪しく光る街灯の列がありました。 ちらほらとカボチャの中身をくり抜いたキャンドルスタンドもこちらに笑みを送り続けています。  ナモの優秀?な思考回路が火花を散らしました。思わずウインクします。 (昼から逃げて……)  この少女が残したメモはこのことを言っていたに違いない、ナモはそう考えました。だとすれば……。  ナモは昼を呆然と見つめる観衆の一人の肩を叩いて話しかけました。ナモに意図はありませんでしたが、下着から解放された衣服越しの胸が揺れに揺れています。  話かけられた男は胸に視線が釘づけにされつつも、ナモの話に耳を傾けました。 「おにいさん、私の……この私の愛する人はどなたでしょうか? 私は誰を愛すればいいの?」  ナモの疑問に男は答えられませんでした。 ひょっとしたら良いお店の客寄せだったのかな、男がそう考えて「実はそれは僕なんだ!」とノリのいい返事をしましたがナモはとっくのとうに別の観衆へと走り去っていました。 「あなたってたしか、夜廻り解放軍のペテリが好きっていってなかったっけ?」  有益な情報が得られたのは、ナモに言い寄る下心に満ちた男が10人を超えた頃でした。 昼の朝日から逃げつつ尋ねた、酒場の女主人が問いに答えてくれたのです。ついでに慣れた態度で、ナモについてきた男たちも跳ね除けてくれました。 「ペテリは“夜の始まり”にいるはず。青空から夜空を取り返してくれているそうよ。一番星を目指しなさい。そこが夜の始まりよ」  ナモは少女の気持ちを無碍にしないように走り続けました。 ……いえ、道中でお土産を買ったりもしましたが、決して足踏みだけはやめませんでした。 ……いえいえ、お腹が鳴ってしまって小袋のクッキーをつまみ食いもしました。カボチャのクッキーは美味だったようです。  やっと一番星の見える丘へと辿りつきました。そこには昼と夜の丁度境目の位置に大勢の人々が、キレイに隊列を組んでいます。  
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