月夜の幻と現実

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「やっほーっ、みんな揃ったねぇ」 そうっと扉を開ければ、けたたましい声が真っ先に耳に飛び込んで来た。 次いで目に入るのは、これでもかと短いスカートに薄手のストールを身に着けている、天文部一にして学校一の美少女の姿。 後ろには眼鏡のノッポに、同じく眼鏡のチビ。こっちは今時小学生にも滅多に居ないだろう、ぱっつん前髪のお河童頭だ。真っ赤なプリーツスカートに白いブラウスでも身に着けさせれば、昭和の小学生が出来上がるだろう。 否、彼女は現役でそうだったに違いない。 ただし、今では中身は一番大人だ。 外見は成長を忘れているが、彼女はこの天文部の顧問だ。 「遅刻かと思ったわ」 「いやあ、ちょっとうたた寝しちゃって」 「和泉先輩遅刻なら、みんなに缶ジュースって決めてたのにぃ」 おいおい、幾らなんでもそりゃ勝手過ぎる。
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