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何となく、先程彼女が言ったかぐや姫の言葉が耳に残っていて、ちょっと意地悪な言葉を掛けてみた。
「お前は、月に帰らないの?」
「へ?」
振り返ったその顔は大きく目を見開き、やっぱり意味を汲み取ってはいない様だ。
「ああ、十六夜さんって凄い綺麗だから、月の世界から来たって言われても信じちゃうかもね」
柔らかい言葉で、意味を汲み取って答えたのは島崎。
そして次の瞬間、美少女の表情が真顔になった。
「……なんで、分かっちゃうのかなぁ?」
ぽつりと呟かれる。
俯いた表情は月明かりが有るとはいえ、窺い知れない。
「今度は上手くやって、ずっとこっちに居られると思ったのになぁ」
「え? 十六夜」
思ったより、うろたえた声が自分の喉から漏れ出た。
「竹からだって産まれなかったし、ちゃんと普通に成長して、普通に暮らしていたのに。ばれたら帰らなくちゃならないのに……」
何を言っているのか、あれは御伽噺だろうと言い掛けた。
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