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ちびちびと料理を口に運ぶ莉李は本当にもう限界らしく、小さくため息をついた。
口元に何とか運んだ料理をモグモグしながらも箸は口元にやったまま。
次の食べ物へと向かない様だ。
「莉李。無理して食わなくていいぞ。あとその肉だけ食いな。」
フッと笑って言えば嬉しそうに頷いて、小さな肉へと箸をやった。
何とか食べた莉李。
「莉李。少しずつでいいから、食べる量も増やしていきな。」
言えば、口をモグモグさせながらこくこくと頷く莉李。
マジ、小動物みてぇな。
「俺、ビール呑むけど。莉李も何か呑むか?」
ってか、莉李が呑めそうなのあるかな?
『…ん。何か呑む。』
部屋の小さな冷蔵庫の上に飲み物のメニュー料金表があった。
手に取り見てみる。
「缶のカクテルか梅酒くらいか?莉李が呑めるの。」
言って莉李に視線を向ける。
『…梅酒。』
冷蔵庫から梅酒とビールを取り、窓際に据えられている小さなテーブルの上に酒を置いた。
「こっちで呑もうぜ。そっちは片付けに来るだろうし。」
言って一人掛けのソファーに座れば、莉李もテーブルを挟んだ向かい側のソファーに座った。
乾杯をしてビールをグッと呑む。
うめぇな。
「莉李。明日はどっか見て廻るか。恵にもお土産とか買うだろ?」
『…ん。そだな。せっかく来たし。色々見たいな。』
ふんわり笑う莉李。
「来年も二人で温泉旅行しような。その次の年もその次も。毎年、正月にはこうやってさ。俺が車の免許取ったら、まだ遠くまで行ってさ。毎年、違う所に行こうぜ。」
あの大浴場で会ったおっさんが言ってた。
一年に一回の自分達へのご褒美なんだって。
何だかんだ言っても女房には感謝してっから、ゆっくり寛げる温泉を毎年探すのが俺の役目なんだって。
結婚してからずっとだって笑ってた。
何かすげぇなって思った。
だから俺も今年だけじゃなくて、これを莉李との毎年の事にしてぇなって思った。
温泉旅行じゃなくてもいい。
毎年、二人で旅行に行こう。
『…ん。楽しみにしとく。陽次と一緒なら何処でも楽しいだろうし。』
微笑んで梅酒を呑みながら答える莉李は、浴衣のせいかやっぱ色っぽく見えた。
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