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「…何か…ごめんなさい。」
『何で莉李ちゃんが謝るんだよ。』
笑って木佐さんが言った。
「…だって…昔の事聞いたの私だし…木佐さんは、今こっちで頑張ってやってるのに…嫌な事思い出しちゃったでしょ?」
だから、ごめんなさい。
『大丈夫だよ。いつまでも、昔の事引き摺ってないから。俺だってこれでも色々と成長したわけよ。アイツが…そいつ、多田っていうんだけど。意識取り戻した時に多田の親に呼ばれてさ。流石に顔出せねぇって思ってたんだけど、彼女まで来てさ。病室に行ったら、多田の奴すげぇ笑顔で俺の名前呼びやがってさ。コケちまったって。笑って言いやがって。何か、参ったよ。マジで。何事も無かったように、すげぇ笑いやがって。後から彼女に聞いたんだけど、多田の奴さ。親と彼女にすげぇ怒鳴ったみてぇで。俺とつるんでるからこんな事になったんだとか色々親に言われてキレたって。その事で俺を責めたってのを聞いたら、まだ立てねぇのにベッドから起き上がろうとして俺の所に行こうとしたんだって。…だからさ、だからダメだって思ったんだ。このまま、コイツらの傍に居たら俺ぜってぇ同じ事繰り返すし、コイツらに甘えちまうって。きっと、多田が元気になってまた俺とつるむ様になれば多田の親とか彼女に悪かったって思う気持ちより自分が遊びてぇとかさ。自分の事ばっか考える奴になるんじゃねぇかって。怖かったんだよ。だから、逃げた。責任とかそんな格好良いもんじゃねぇよ。逃げだ、逃げ。』
木佐さんは近くにあったビールをグラスに注いで、ゴクゴクと呑んだ。
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