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「…違うよ。木佐さんは逃げたんじゃなくて…周りの人の事を考えてくれたから。その多田さんの親とか彼女さんとかの事、ちゃんと考えてくれたんだよ。他の仲間にも同じ思いさせない様に。木佐さんは仲間想いで優しいんだよ。」
きっと、木佐さんは自分の事よりも仲間の将来の事を考えてくれたんだと思う。
木佐さんが遠くに離れる事で、仲間が皆それぞれの道を大切な人と共に歩いて行きやすい様に。
大切な人をきちんと見極められる様に。
仲間が居ると、いつまでも一緒に楽しく過したいって思ってしまうから。
誰かが居なくなる事で、それぞれが色んな事考えてくれるんじゃなかって。
仲間の中心に居た木佐さんが離れて行く事で、他の仲間達も程よい距離で付き合いが出来る事を木佐さんは分かってたんだ。
『ハハッ。それは買い被り過ぎだよ。莉李ちゃん。俺、そこまで考えて無いよ。』
『そうっすか?俺も莉李が言ったのが合ってると思いますよ。やっぱ、仲間と居るとすげぇ楽しいしずっとこのままでいてぇとか思いますもん。でも、仲間にも中心人物って居るんっすよね。自然とその人の周りには集まるっての。だから、その人が居なきゃそこまで集まんなくなったり。たまに集まっても仲良かった奴全員がってのは無いっすよね。実際、兄貴達も全員が集まるって無いだろ?三人で集まるのでもそこまでねぇしさ。だから、木佐さんはそういうの早い段階で気付いたんじゃないっすか?その多田さんの事がきっかけで。』
陽次も私と同じ事を思ったらしい。
『陽次君も莉李ちゃんも俺の事あんま知らねぇから。俺って、そんなに良い奴じゃ無いよ。なっ?尋。』
言いながら、尋さんのグラスにビールを注ぐ木佐さん。
『木佐は…極悪人だよなっ!すげぇ悪い奴っ!』
木佐さんの隣に居た尋さんが、そう言いながら木佐さんの肩に手を回しバンバン肩を叩いている。
『極悪人って何だよっ!言い過ぎだろっ!』
その尋さんに頭突きをする木佐さん。
『木佐!木佐は木佐だっ!だから、木佐らしく木佐を全うしろっ!』
と、訳の分からない事を言いながら尋さんと反対側に来て肩を組む亜紀さん。
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