莉李&陽次 温泉旅行編

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木佐さんを挟んで、尋さんと亜紀さんの三人はギャーギャーと騒ぎ出した。 『木佐ってさ。結構、大変だったんだ。』 私と陽次の間にひょこっとビール片手に現れた浬さん。 『アイツの族は俺等の族と統合したんだけどさ。統合って言ったら聞こえはいいけど、実際は俺等の族に負けて吸収されたって事だから。そうなれば、やっぱ納得しねぇ奴も出てくるだろ?だけど、それをアイツ一人で纏めてさ。俺等の族と自分の族の間に挟まれてたから。何か、いつも気張ってピリピリしてて。そんなアイツを見兼ねて、尋が家に呼ぶ様になってさ。たまには気抜ける様にって思ったんだろうな。尋と亜紀はいっつもああやって、木佐を弄ってさ。俺等はいつも三人でやってきたけど、木佐は一人で背負い込む性格だから。多田の事だってそうだしな。だから、今回のこの旅行も本当は木佐に会いに来たんだ。陽次と莉李ちゃんには悪いけど、熱海って聞いて尋がな。尋が一番心配してたから。』 浬さんの話を聞いて尋さんを見ると、木佐さんを弄って笑ってた。 木佐さんもさっきみたいな表情は一切無くて、凄く笑ってた。 尋さんも木佐さんも優しい。 お互い、族のトップとして背負うものが大きくて。 だから、尚更お互いの気持ちも分かるんだ。 ただ、尋さんは浬さんと亜紀さんと言う心を許せる親友達が居てくれた。 きっと木佐さんにもそういう人は居たのかもしれないけど、人に甘えるのが下手なんだと思う。 梅酒を呑みながら目の前で騒ぐ三人を暫く眺めてた。
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