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『その人達は何処に住んでんだ?野菜作ってるって事はどっか地方の方か?』
親父に聞かれる。
「どうだろうな。莉李が住所書いてもらってただろ?でも、野菜作ってるってって言っても趣味程度だって言ってたぞ。本格的って訳でもねぇだろうし、そんな田舎でもねぇんじゃね?知らねぇけど。」
莉李が住所を交換してたけど、俺は見ていない。
『…えっと…確か、埼玉?だった様な気がする。』
莉李が答えた。
『埼玉か。まぁ、それなりの土地はあるのかもしんねぇな。そんなに遠くねぇし良い距離だな。』
「埼玉なら遊びに行けるな。莉李。」
そんな事を話してたら莉李は何やらゴソゴソとバックの中を探っている。
『…あっ。あった。これだ。』
言って、バックの中から紙を取り出しオヤジに見せている。
どうやら、幸恵さんに貰った住所が書いてある紙らしい。
『埼玉県さいたま市…加賀屋幸恵…加賀屋?』
親父がその紙を見ながら何やらブツブツ言っていると思ったら途中で眉間にシワを寄せた。
「どうした?親父。」
『…この加賀屋さんってぇのは、あれか?もしかして、大工か何かじゃねぇか?』
顔を上げそう言った親父。
「あぁ。おっちゃんは大工だって言ってたな。…はっ?親父、もしかして知ってんのか?」
ちょっと驚き聞いた。
莉李も驚いている様でバッっと親父を見る。
『…ん、あぁ。たぶんな。俺の知ってる加賀屋さんかもしんねぇな。その人の名前は知らねぇのか?旦那さんの方の。』
『…おっちゃん…としか聞いてないな…。』
莉李が答える。
「…あー。ん。俺も聞いてねぇや。ずっとおっちゃんって呼んでた。」
頭をポリポリ掻きながら答えた。
幸恵さんの名前は莉李が聞いていたが、おっちゃんの名前までは聞いて無かった。
『加賀屋幸恵って名前だった気がするしな。加賀屋さんの奥さん。きっとそうだ。だとしたら、すげぇな。』
親父が感心してる。
確かに。親父の知ってる加賀屋さんだったら、もの凄く偶然の出会いですげぇ。
『…幸くんの知り合いか…凄いな。世の中狭いな。』
莉李も感心してる。
『だな。俺の先輩なんだよ。加賀屋さん。』
へぇ〜。すげぇ偶然だわ。マジで。
その後、幸恵さんとやり取りをしてみたらやっぱり加賀屋さんは親父の知ってる加賀屋さんだった事が分かった。
その話はまた今度って事で。
とにかく、今回の旅行。
莉李の為に色々と計画して連れて行けて本当に良かった。
莉李には辛い想い沢山させちまって…でも、それを無かった事には出来ねぇし。
だから、その辛かった過去以上に楽しい今を想い出として莉李の心に刻んで欲しかった。
莉李が何度か『ありがとう』って言ったけど、逆に俺が莉李に言いたい位で。
俺を見捨て無いでずっと着いて来てくれた。
これから先の人生、莉李と色んな事を乗り越えながら、笑って過ごして行きたい。
莉李の笑顔をずっと見て生きていきたい。
俺の勝手な願望かもしんねぇけど。
莉李ならきっと着いて来てくれる。
莉李。俺のになってくれて、全てを俺に注いでくれて【本当にありがとうな。】
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