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入口の戸が開いた。ほぼ予定通りに彼女は現れ、空いてる席を探している。ボクの隣りが、先程まで空いて居たいたというのに、今は糞ババァが踏ん反り反って座っていやがる。折角、隣りに座れるかもしれないという、素晴らしい出来事を、この糞ババァの為に逃したと思うと、ひどく憂鬱になる。
回りを見渡す彼女は、知り合いを見つけたらしく、その席についた。そして、すぐに会話をはじめた。確認できるのは声だけだ。不運にも糞ババァの醜い肉の塊で見えないのだ。
休憩時間の短い時間の中で、上手く相席になる努力が台無しだ。腹を立てても仕方ないが、このやりどころない気持ちは一体どうしたらいいのだろうか。
転機はやはりやってくる。事態は急変する。耳すまして雑音を─正確には彼女の会話を─聞いていたのだ。ほとんど彼女の事は情報がなく、ほとほと困り掛けてる矢先に、この事に気付いた。
もう糞ババァの事はどうでもよい。いや、むしろ感謝すべき糞ババァ様だ。なぜならその肉の塊で死角になり、堂々と話が聞けた!
こうして、彼女の休憩中の些細な会話を、堂々と聞くことが習慣となる。
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