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「48不思議ってのは怖いのばかりじゃないんだよな。
他にはどういうのがあったっけか」
「夜中の校舎でそれを唱えると、呪いたい相手が演説中に必ず舌を噛む呪文とかあるんだぜ。
48不思議その35だぜ。
『NKフィールド全開』って三回唱えるだけなんだぜ」
「なんだよ、そのものすごーく限定された呪いは。
呪いたい相手が演説してなけりゃ意味ねえじゃねえかよ。
それにNKってなんだよ。
ナチュラルキラー細胞かかかっ……はぶっ」
「NKフィールド全開、NKフィールド全開、NKフィールド全開……あ、効いた」
ぼそぼそと聞こえてたイサオの呟きは呪文だったらしい。
呪文が唱えられると同時にハジメが盛大に言葉を噛んだが、さらに言葉だけだなく舌も噛んだらしい。
「NKは肉骨粉のことだぜ。
たぶんなんだけど、肉骨粉を餌にしてた牛を食べて狂牛病にかかったら、脳がやられて呂律がまわらなくなるからって意味でつくられた呪文なんだぜ」
「なに得意気に語ってんだよ。
たまたまに決まってんだろ」
ハジメはつい舌打ちをしてしまい、イテテと言う。
「他にはどんなのがあるんだい?」
二階に着いたところでイサオが訊く。
「一階の会議室の横の階段を二段とばしで駆けあがったらみこすり半の時の気持ちになれるとか」
「あんまりなりたくねえな」
「あ、水曜日の深夜に自分のクラスに行くと、自分の席にもう一人の自分が座ってるっていうのがあるんだぜ。
そのもう一人に触られたら“あっちの世界”に連れて行かれてしまうんだぜ」
僕たち二年生の教室はこの二階にある。
窓から見える向かい側の廊下に並んだ窓が、僕たち二年生が使っている教室の窓なのだけど、昼ならともかくこの暗い中では流石に中の様子までは分からない。
それに下の方へと視線をおとせば先の3年5組の教室も見えてしまうので、みんなあまり熱心に窓の外を見ようとはしない。
ぐるっと回って教室に行ってみようと言い出す者もいないようだった。
まあ今日は水曜日ではないからどのみちその怪異は起こらないはずだけど。
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