3人が本棚に入れています
本棚に追加
■□■□
「なあ、やっぱりだぜ」
率先して皆を誘っておきながら、はじめに怖じ気づいたのはゴウだった。
三階に着いたところで口を開いたが、その口調からして最後まできかなくても彼が何を言おうとしているのかは分かる。
でも「タグお代わり」の声をきいて、怪異に現実味を感じてしまったのは他のみんなも同じだった。
「そうだね」
言い掛けたゴウの言葉を受けたイサオが、暗黙の提案に同意する。
「あんまりウロウロしてると宿直の先生に見つかるかもしれねえしな」
ハジメもその提案を受け入れるために理由を付けた。
どうやら僕以外の全員が引き返すことを望んでいるようだ。
「宿直なんて今はいないって」
僕は笑ってハジメの言ったことを否定する。
「どこの学校でもセコムだろうし、それも校長室とか職員室だけだよ」
「いや、ウチは宿直いるんだぞ。
知らなかったのか?」
「うん、学校の伝統とかシキタリなんだよね。
セコムもあるけど、先生自ら持ち回りで警備してるって話だよ」
「そうなのかだぜ?」
ハジメとイサムの説明にゴウが驚く。
もちろん僕も驚いた。
「なんだよ、ゴウ。
そんなことも知らねえで侵入を計画してたのか?」
「いや、元はと言えばオレじゃないんだぜ」
そう言ったゴウは、助けを求めるように僕の顔を見た。
「でもさ、ここまで来たんだし、そこの図書室だけ覗いて帰ることにしようよ」
僕は説得にかかることにする。
だって目的地の図書館はもうすぐそこに見えているのだ。
今を逃せばまた一年待たなければいけない。
だけど、その時――
階下からコツコツという足音が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!