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「ちょっと待って」
やはりきちんと説明をしておこう。
進路指導室のある廊下に入ったところで足を止めて、僕は三人に呼び掛ける。
「早く行かないと追いつかれるぞ」
そう言いながらも、僕の声の様子が違うことに気付いたらしく三人ともが立ち止まって振り返ってくれる。
「実はお願いがあるんだ」
「今そんな場合じゃないんだぜ。
後にするんだぜ」
「今じゃないとダメなんだよ。
ゴウにも話した、あの図書室の隠し扉の開け方」
「あ、ああ。
ドアが現れても、信頼できる人間と一緒にドアノブを回さないと開かない……だったんだぜ」
「なんだい、その胸あつ設定」
「確かにイサオが好きそうな設定ではあるんだけど、本当なんだよ」
「それがどうしたってんだ?」
「僕はどうしてもその部屋に用事があるんだ」
図書室の秘密の部屋――
あそこに入るために僕はこの一年ずっと待っていたのだ。
「一年の時にルリっていただろ。
土口田 瑠璃」
「とぐちだるり……ああ、確か中学の頃からお前が仲の良かった」
中学も一緒だったハジメが思いだした。
「あ、ボク一年の時は同じクラスだったよ。
けど……」
イサオも知っていたらしい。
その「けど」の後に続く言葉が問題なのだ。
「学校に来てないだろ」
「不登校ってヤツだぜか」
「実はただの不登校じゃなくて……」
ルリは消えたのだ。
世間的な諸々では行方不明として扱われたし、誘拐事件の可能性ありとして警察の捜査もあった。
真相は違う。
真相は僕だけが知っている。
今まで誰にも話したことのない話だった。
話しても信じてもらえるような話でもなかった。
この三人なら信じてもらえそうな気がした。
だけどぼくが口を開きかけたところで、ドカンという大きな音が鳴り響いた。
扉が蹴破られたのだと気付いたのは進路指導室から熊のようなシルエットの何かが姿を現した後だった。
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