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人のモノとは思えない跳躍を見せて臼田先生が飛び掛かってきた。
大きくも小さくもなく、太っても痩せてもいない、強いて特徴をあげるならばだらしのない中年体型。
それがネコ科の獣のような俊敏な動きを見せたことに皆呆気にとられた。
飛び掛かられたのは先頭にいたゴウ。
「だぜええ」という悲鳴が響いたところで、僕は反射的に絵を展示してあるパネルを引っ掴んで臼田先生へと倒した。
パネルは重くはないけど、高さは二メートル以上ある。
突然のことに驚いたようで、臼田先生はその場を飛び退いた。
そして少し離れたところで構えてこちらを睨みつける。
獅子舞とゴブリンのハーフとからかわれる顔は今は本当に獅子舞とゴブリンを足したかのような醜悪で狂暴な顔になっていた。
指の爪も悪魔のような鉤爪に変わっている。
「死ぬかと思ったんだぜえ」
ゴウが慌ててパネルの下から這い出した。
「臼田先生……だよな」
ハジメが信じられないといった顔で担任教師を見つめる。
「臼田先生はハロウィンの夜にゴブリンと獅子舞のハーフの本性を見せる……。
48不思議は、全部ほんとうなんだ」
僕が言う。
「去年のハロウィンに、僕とルリが図書室の秘密部屋のノートに書いたから、ほんとうになったんだ」
「どいうことだ?」
ハジメが訊く。
「言ったとおりの意味だよ。
もともと図書室の話だけは本当だったんだ。
そこにあったノートに僕とルリが残りの47不思議を書いたんだ」
そこまで言ったところで臼田先生が再び飛び掛かってきた。
今度の標的は僕だ。
だけど僕に到達する前に横から倒されたパネルにぶつかり、襲撃は阻止された。
先生の攻撃を予測したイサオが傍らのパネルの後側に回り込んでいて、タイミングを見て倒してくれたのだ。
「イサオ、ありがとう」
だけどそれぐらいでは全くダメージはないようで、先生は直ぐにアクションスターみたいな動きで跳ね起きる。
次の瞬間、その頭部が突然振るわれた釘バットで打ち砕かれた。
やったのは追いついてきた懇切丁寧な指導者だ。
どうやら熱心な指導の対象には先生も生徒も見境ないらしい。
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