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「早く図書室に!」
図書室の扉の前でゴウが僕たちを呼ぶ。
懇切丁寧な指導者が「しぃどぉおおお、しぃどぉおおお」と臼田先生の骸に指導のダメ押しをしている内に僕たちは図書室へと駆け込んだ。
入り口の脇に電灯スイッチが三つ横並びであった。
ゴウがそれをパチパチと全てオンにする。
久しぶりの明かりに目が眩んだけど、とりあえず、手当たり次第の机をドアの前に動かして積み上げる。
「これだけやれば、あの怪物でもそう簡単にドアは開けられないだろうぜ」
「秘密のドアってのはどこだ?」
「あれだよ」
僕は言語と芸術・美術の書架の奥の壁を指さす。
こんな事態だというのに、図書室の本の匂いが普段と変わらないのがなんだか不思議だった。
壁付けになっている百科辞典・年鑑の書架と奥の壁との隙間にその扉はあった。
見た目も、学校の他の場所で使われてるのと同じ、普通の白ペンキ塗りのスチール扉だ。
こんな状況で見るのでなければ、倉庫か配管室だろうと、こんな場所に扉があることを疑問にも思わないだろう。
「これって普段はないの?」
「ああ、ないんだよ。
いつもはどれだけ探してもここには何もない」
そこまで行ってドアノブに手を掛ける。
去年と同じだ。やはり一人では開かない。
「去年はルリと一緒にドアノブを回したんだ」
僕がそう言うと、三人ともおずおずとドアノブに手を伸ばしてくれた。
抵抗なくカチャリと回る。
ドアが開いた。
やはり何の変哲もない小さな部屋。
何もない殺風景な壁とありふれた事務机。
そのうえにぽつんと置かれたこれまたありふれた大学ノート。
「みんな、ありがとう」
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