二夜目の魔法はペナン島で

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「それだけじゃないんだぜ。 扉の奥の秘密の部屋には一冊の不思議なノートがあるんだぜ」 「それってまさか」 イサオが慌てた声を出した。 都市伝説で語られる不思議なノートといえば、誰しもが想像するんじゃないだろうか。 「ゴウ、早まるんじゃない。 誰を殺したいのか知らないけど、命というものはそんな簡単に失われていいもんじゃないんだよ」 イサオはそうまくしたててゴウに詰め寄る。 「一体誰にそんな恨みがあんだよ? 担任の臼田か? それともお前を振った緒方センパイか?」 ハジメも皮肉な調子を引っ込めて真剣だ。 「ば、バカやろうだぜ。 何でデスノートなんだよ」 「何だ、違うのか」 イサオはホッとした様子でゴウから離れる。 「じゃあどういうノートなんだ?」 ハジメは目を逸らせ気味に眼鏡のブリッジを押し上げる。勘違いしたことが恥ずかしいのだ。 「そこに書いた願いが何でも何でも叶うってノートだぜ」 「星の入ったボールみたいなものだね」 僕がそう言うと、 「7つ集める必要がないぶんお手軽だぜ」 ゴウはそう応えて笑った。 「ゴウはどんな願いを書くつもりなんだい? やっぱりスケベな願い?」 いつも穏やかでにこやかなクセに、実はイサオはなかなか辛辣だ。 「なにがやっぱりなんだぜ。 俺の願いはまだ決めてないんだぜ」 「まあ、別に知りたくもないんだけどね。 ボクは南の島のビーチに旅行とかしたいなあ」 そして一言余計だったりもするくせに、願いはなぜかOLみたいだ。 「とにかく図書室に行けばいいわけだな。 さっさと行こうぜ。 こんな入り口でモタモタしてたら誰かに見つかってしまう」 ハジメがイライラし始めた。 クールでシニカルなメガネ男子を気取っているくせに、本来はせっかちで心配性なんだ。 先に立って歩き、少し進んだところで持参した懐中電灯のスイッチを入れた。 僕たちもそれにならって各々自分の懐中電灯を点ける。image=496487685.jpg
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