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「図書室は三階だね。
そこの階段から上がろうか」
言ってイサオが懐中電灯の光で示したのは、三年の教室が並ぶ廊下。
現在地から一番近いのだから当然なのだけど、僕は反射的に「あっちにしよう」とひとつ奥の廊下を指さした。
「ん、なんでだ?」
ハジメが怪訝な顔をする。
「ああ、三年五組だからだぜ」
ゴウは思い当たったようだ。
三年五組、とは言っても現在は使われていない空き教室、来賓用玄関に掲げられていたプラスチックの案内板でいくと『105』となる部屋には、恐ろしい噂があった。
「私立鳩朔学園にまつわる言い伝えその4だぜ」
「またえらく古い番号だね。
ああ、ゴウが順番なんて憶えてるはずはないから、番号は適当なのかな」
「ビビるようなものなのか?」
イサオとハジメの話への食い付きが、図書館の隠しドアよりも良いように感じる。
やはり怪談というものにはある種の吸引力があるのだろう。
「この学校は、もともと処刑場のあった跡地に建てられたらしいんだよ」
言い始めた僕が説明を始める。
こんな夜中の学校でわざわざ口にしたい話ではないけど、言わないままに済ませることも無理そうだ。
「明治にはいって廃止されて、その後にこの学校が建てられたんだ。
で、ちょうどその処刑場で切った首を晒す台座があったのが、三年五組の教室の辺りだったらしいんだ」
「時代劇の、打ち首獄門、晒し首ってやつだぜ」
「わざわざそんなとこに学校作ることなんてないのにね」
「そういうこともあってあの教室は使われなくなってたらしいんだけど、ここ一年ぐらいで、あの教室の床一面に生首が転がってるってのを視たって言いだす人が出てきたらしくて……」
その視たってうちの一人は僕の幼なじみのルリだった。
ルリは人付き合いが苦手で、僕以外と話をすることはほとんどなかった。
だからそのことも僕以外の誰かには話していないようだった。
「ここ一年って、何でだろうな」
懐疑的なスタンスを崩さないハジメだけど、その足はすでに件の廊下へ曲がる角を素通りしている。
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