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「だいたい、図書室行くんなら最初から言っておけよ。
校長室のとこの階段を登れば早かったんだ」
ハジメが言う。
僕たちはこの夜の侵入経路として、昼間のうちに来賓用玄関の両開きガラス扉のラッチを一箇所上げておき、その扉から入っていたのだ。
来賓用玄関のすぐそばには階段があったので、三階に行くと分かっていればそこから上がればよかったのだ。
「まあ探検も兼ねてゆっくり行こうだぜ」
どうやらゴウはわざと黙ってたらしい。
自分で言った探検という言葉のひびきでウキウキとしている。
化学室の手前の角を曲がると、右手に化学準備室、物理室、物理準備室と並び、その向こうに目指す階段が見えた。
廊下の左列に教室はなく、窓がずらっと並んでいる。
その窓からは狭い花壇スペースを挟んでさっきの話の3年5組の窓が臨めるので、そちらの方を見ないように顔を背けながら歩く。
懐中電灯の灯りは照らしていない範囲の闇をより濃くするみたいだ。
濃い闇への恐怖とほんの少しの好奇心。
僕は廊下の先に向けている光をついつい窓の方に向けてしまった。
でもLEDの白っぽい光を反射したガラス窓が白く染まっただけ。
「おい、外に光向けんな。
見つかるぞ」
階段の手前で振り返ったハジメが鋭い声を飛ばした。
「あ、ごめん」
慌てて懐中電灯を下に向ける。
窓の外には花壇と向こうの廊下しかないので大丈夫だとは思うけどウッカリしていた。
だけど再び闇を取り戻したガラス窓の向こう、背を向ける際のほんの一瞬に──
三年五組の窓から花壇へ、ゴロゴロとなだれて落ちる大量の生首が見えた気がした。
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