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――彼の指が好きだった。
――――
火にこだわらない彼はその時によって違っていた。
今日は綺麗な銀色のジッポ。
きっとどこかの女の人から貰ったんだと思う。
きっと――なんて良い風に解釈した。
絶対に――が正しいのに。
二十五時の店内は薄暗くて有難い。
真夜中は、色々と起きるから。
まるで悪い夢みたいな事が。
ベルモントを飲み終えた私は、ことっ、とカクテルグラスを置いた。
すぐ近くにキャンドルが緩く、小さく揺れている。
「――おかわり?」
ウイスキー・ミストが少し残ったロックグラスを軽く揺する彼が言う。
初めても、その言葉だった。
その時のカクテルは確か――。
「――デプス・ボムにする」
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