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ザザーッサザザザーーッ!
砂埃を濛々と舞い上がらせながら、あたし知念祐梨はサンド・ボードを華麗に駆って、小高い砂丘の急斜面を猛烈な勢いで滑り降りてきた。
こぶを飛び越える大きなエアを極め、エッジを滑らさせて巧みに停まると、虹色に輝く偏光ゴーグルを額の上に掻き上げた。
フーッとひと息ついたのも束の間、無数の吹き矢がヒュンヒュンと空気を切り裂き、あたしの髪をかすめ飛んでいった。
「もう、ホントしつっこいわねーッ!そんなんじゃ女の子にモテないわよーッ!」
振り向く余裕もなく背後に向け叫ぶと、慌ててゴーグルを降ろして再び滑走を開始した。
エージェントのLINDAがこの話を持ち込んできたのは、一ヶ月半前のことだった。
「自然科学博物館からの依頼だ。内密の
内に盗掘品を元の墓所に戻して欲しいそうだ。やってくれるなCANDY?」
「見つけるんじゃなくて戻すの?いつもと逆じゃない?」
「元々イリーガルな方法で手に入れたお宝だとかで、展示はおろか所有してること自体ヤバいブツらしくてな。」
「何を今更。ロンドン博物館なんて略奪品のオンパレードじゃないの?」
「まあな。だが今はもうそういう時代じゃないって事さ。」
LINDAは年齢不詳だが、見た目の割に達観しているところがある。
「やれやれトレジャーハンターと墓泥棒は紙一重っていうけど、まさか返しに行かされるとはね~。あたし生まれる時代を間違えたかも。あ~あ夢が無いな~!」
あたしは思わず嘆かずにはいられなかった。
「そういうな。由緒あるミュージアムとお近づきになっておいても損はないだろう?」
「まあそういう考え方もあるかもね。」
「要はポジティブ・シンキングだ。ここはひとつ貸しを作っておいて、お得意様に加えさせてもらうさ。」
流石、大人よね。
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