Hands.

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◆◇◆◇◆  テッドには、昔から恋い焦がれている少女がいた。  彼女の名は、サラ。  リサの親友であり、彼の親友でもあり、……叶わない初恋の相手でもあった。    なぜならば、サラの好きな人はテッドの親友であるブラック。美しい空色の瞳がいつだって彼を映し出しているのは、ずっと昔から変わらない。  そして、ブラックの瞳にもいつだって彼女が映っていた。  勝ち目なんて、最初から無かった。そうなる事が宿命のように、ふたりはいつだって互いの瞳に互いだけを映しだしていた。  テッドにとって、忘れる事も諦める事も出来ない初恋。  そんな辛く切ない想いから解放してくれたのは、リサだった。  ――思い返してみれば、心の底では諦めていたくせに新しい恋に踏み出すのが怖かったただの臆病者。  そんな彼の心を癒すでもなく、包み込む訳でもなく、……ぶち壊すように突っ込んできたリサ。  がむしゃらに『好き』の気持ちをぶつけて、無理矢理心に踏み込んで。  突き放そうと思っていた、どうせ傷付けるしかないのだから、と。  けれど、いつしか惚れていたのは、夢中になっていたのは、テッドの方だった。    誰かに愛されるのは、こんなにも嬉しい事なんだ、と強く思った。  同時に。  どんなに強く大切な想いも、こんなに簡単に変わってしまうのかと、恐怖を覚えたのも事実。 .
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