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「頭、痛い……」
「ったりめぇだ! 酒の飲み過ぎだバカ!」
起きぬけにボソリと呟けば、二日酔いに頭には堪える怒鳴り声が降ってきた。
テッドが小刻みに震えている事にも気付かず、怒鳴り声の主はぽんぽんと偉そうに説教を垂れている。
背を丸めて耳を塞ぎ、逃げるように布団にもぐり込むと「逃げるな」と低く忠告された。
渋々顔を覗かせたテッドは目の下にぼっこりと隈を作った状態で声の主を見上げた。
「……ブラック……何、してんの」
「珍しくテッドが起きてこねぇから起こしに来たんだよ」
ふんぞり返る侵入者――ブラックはテッドの上司であり、親友であり、“元”恋のライバルだ。鈍感極まり無いブラックはその自覚は欠片も無かったようだが。
覇気のないどろりとしたテッドの視線を受け止めたブラックはそのまま視線をこっちへ、と部屋の一角を指差した。
「そしたらほら、シンがいた」と続けて。
テッドのベッドの傍らにある、ソファ。その上には丸まって眠るシンがいた。
何で? と問い掛ければ昨晩ここまで運んできてくれたらしいとの答えが返り、テッドは再び項垂れた。
今度は、頭痛ではなく己の情けなさに。
「ん、飲め。んでちったぁ目ぇ覚ませ」
「ありがと……」
冷たい水を差し出され、素直に受け取り飲み干せば幾分か楽になったようで、テッドは息を飲んで頷いた。
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