Hands.

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 その間も、リサを呼ぶ声は止んではいない。けれど、思いのほか穏やかな声音に安堵を覚えた。  もしかしたら、ただの気にしすぎで何も気付いていないのかもしれない。ならば、今のうちに適当にやり過ごし、後で返事をしてもいいかもしれない。  勢いよく顔を上げ、声の主へと視線を移す。 「……だから、何やってるのって聞いてんの」  ――もう無理だ。  確かに声の主は穏やかな声音の通り笑顔を浮かべていた。  けれど、彼と長い付き合いのリサにはよく知っている。その笑顔に、世にも恐ろしい悪魔が潜んでいる事を。 「テッド……見りゃわかるだろ。今取り込み中なんだよ」  どう誤魔化そうかと模索していたリサを差し置いて、告白をしかけてきた男が言い放つ。  それも、声の主からリサを隠すように、その細い身体を背に隠して。  リサの唇から「ヒッ」と、悲鳴のような声が上がったことには、誰一人気付いてはいない。 「ふーん……」  短気な彼の神経を逆なでするに充分だった言葉に対し、反応は薄い。  逃げるなら今かと、リサはそろりと足を踏み出した。 「……あ、れ」 「そんなの知るかよ。いーい? 第一部隊小隊長、ジョーイ君」 「な、何だよ……」  リサの腕をがっちりと掴む腕と、満面の笑み。 「こいつは俺のなんだから――手ぇ出してんじゃねぇよ」  怖い。  掴まれた腕の痛みと、決して笑ってはいない垂れた瞳に、リサはひくりと顔を引きつらせた。 .
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