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「――だから! どうしてアンタはいつも敵を増やすような言い方すんのよ!! それにこれはあたしの問題なんだから首突っ込まないでよ!」
「……」
行きつけの酒場にて、いつもの1番奥の席。
告白してきた男と話をさせなかったテッドは、有無を言わせずリサの腕を取ったままずるずるとここまで引きずってきた。
納得のいかないリサはテッドを前に怒りをあらわにしているが、当の本人は涼しい顔で彼女を見つめている。
「じゃあ、聞くけど。今リサと付き合ってるのは俺だよね? どうして告白してきた男を庇うの? 嬉しかったの?」
「それはっ、」
「お付き合いしている俺からしたら、この上なく面白くない事なんだよねー」
ぽんぽんと質問を投げかけるテッドは長い足を組み直し、見下すように鋭い視線をリサに向けている。
ぐう、と息を飲んだ彼女の胸中にあるのは、「正直嬉しかった」という想い。決して。決して口には出せないが
その気持ちは告白された事実ではなく、少し歪んではいるが心配してくれたテッドの言動に対して。
まるで奪われたくないと言われているようで、くすぐったくて、告白してきた彼には悪いが、嬉しかった。
「言いたくない」
「――は?」
「暫く口、聞きたくない」
「何……?」
だけど、それとこれは別だ。
大切だからと何をやっていいという訳ではないし、宝物のようにおとなしくしまいこまれるタイプでも無いリサは、テッドとの関係に疑問を抱き続けていた。
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