Hands.

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 慣れない態度がやけに癇に障り、ぎろりと睨みつけながら言い放った言葉にも、彼はけろりと笑っている。 「ここに来る時擦れ違った奴がな、テッドの様子がおかしい、って言ってたんだ。んで気になるから来てみりゃ煽り酒してるし」 「……別に……」 「どした。話なら聞いてやるぞ? 今なら無償で」 「へっ、どういう風の吹きまわしすか」  とりあえずグラスを受け取ると手の中で弄ぶと、カラン、カラン、と悲しく氷が揺れた。 『あたしはあんたが好き』  ――俺だって好きだ。  誰にも渡したくないって思うくらいに。  なのに、何がどうしてこんなことに?  ぐるぐると同じところを彷徨う思考は酒のせいではない。答えなんか、最初から持ち合わせてなどいないのだ。 「リサさぁー……何考えてんのかな」 「うん?」  好きな女が他の男に言い寄られているのを見かけて暢気でいられる程心が広くないし、大人でもない。  なのに、何をむきになってあの男を庇うのか。 「意ー味わっかんねぇー」 「それは俺の台詞だ」  ぼそぼそと呟いてる間もシンのグラスの中身は増えたり減ったりを繰り返し、貴重な酒はぐんぐん減っていった。 「あーもうっ」  とりあえず頭を掻き乱して、グラスを一気に煽った。  きついアルコールが喉を下っていく。  ……ぐらり、と世界が揺れた。 .
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