第1章

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視線をそらして、口ごもる彼女に俺は沈黙するだけで、何故と問い掛けるのをやめた。 「大体、どう説明して受けてもらえるかわからないし。でも聞いてもらえた後のこと、全く考えてなかったわね、という行き当たりばったり? まずいわよね。聞こえていたらどうしよう?」 うん、聞こえてるよとは言わない。 口元を片手で隠してつぶやく声が、小声でも近いから聞こえちゃってます園田さん。 突っ込んで言わない代わりに、聞こえていないふりをしつつ、手元にあるお菓子を食べる。 彼女の癖かもしれない早口言葉を言う表情は、とても恥ずかしそうに頬を染めていた。 知らないふり、俺気付いてませんと、思いながらお菓子を食べていたら、袖口をひっぱっれる感覚に視線を落とす。 先程より表情穏やかな小さい俺が、こちらを見上げていた。 「もういいのか?」 確認で問いかけると、一度頷き園田さんを見て数歩下がって腕を組む。 むすっとした顔で見上げる様子に、彼女は眼を輝かせていた。 それでも、手を出さないよう胸元で両手を組んでいるのは、個人的にありがたかった。 「園田さん」 俺の呼びかけに、彼女はピクッ肩がゆれると、背筋を伸ばして大きく深呼吸した。
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