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気がつかない内に、俺はイライラがたまっているらしい。
「それじゃあ、どのあたりから探そうか?」
早めに済ませてご機嫌とらねばと、室内を見回していたら、園田さんは石膏像がおいてある棚の下の方を指さした。
「多分、ナツはあの辺にいるはず」
言われた場所をみつつ、俺はあれ?と首を傾げる。
「ナツ?」
俺の疑問に、園田さんは「そうだよ」と頷く。
「小さな私の名前。私の名前の一部をとって、カタカナでナツ」
「名前があるんだ」
軽い驚きと何気なく行った言葉だったが、彼女は目を丸くして見返してきた。
「もしかして、宗那君。この子名前ないの?」
「・・・ない」
言われて思い返せば、俺は「小さな俺」としか呼ばなかった。不便なことも今までなかったから、特に気にしたことがないことに今更ながら気付く。
「宗那君。小さい彼に失礼だよ。いくら周りに見える人がいないからって、名前以外で呼ばれるのは、この子寂しくなかったかな?」
「どうだろう?」
目を向ければ、腕を組んで大きく頷く。
それから、園田さんを見てにかっと笑って軽く拍手して見せた。
彼女の意見に大きく賛同して見せたのを見て、「どういたしまして」とお礼を言う。
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