第1章

7/32

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
あまりにしつこいから、用件のことを簡単に言えば、相手は納得していた。 「そうなんだ。でも、いちしまって、略しすぎてない?」 「市原田八嶋 悟志(イチハラダヤシマ サトシ)て、長いし言いづらい。覚えてはいるから安心しろ」 困惑する彼に、俺は遠慮なく言い返す。 彼の名字がらみの会話は挨拶がわりのものだし、お互い気にしていない。 数少ない友人の一人で、「占い師」と言われる俺の理由を知っている、小学校からの付き合いだ。 「やっぱり、園田さん美人だよなあ。あの眼鏡も似合うし、知的美人というか」 ただ、年々女性好きが同年代の中でも、特に加熱しすぎるのが心配だ。 異性と話すだけで、赤面してどもっていた初々しさはどこいった。 次の授業開始の合図で立ち去る友人の後ろ姿に、思わず「大丈夫か?」と考えてしまうのは、俺の心配しすぎるのだろうか?
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加