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第二章「因果の花」四話「花と知る」
敵の眼から隠れるために、僕は変化の術で木箱に化けていたのです。
そのなかに常さんを匿いながら、敵が来たときのために準備していました。
店主様が考えた策通りに、敵が油断するのを待っていたのです。
「シロちゃん、お願い!」
常さんの叫びに応じて、僕は再び変化の術を使いました。
「ぬぬうっ!?」
黒い狒々が呻きました。なぜならば、その眼には常さんが二人映っているはずだからです。
「ぬおおぉ──っ!?」
その呻きが驚愕に変わり、狒々は錯乱したように辺りを見回しました。
「これがわたしの能力、グラムサイト(月光眼)よ」
それはエルフの魔力で、実際とは違うモノを相手に見せる能力でした。月をグラムルと呼び、エルフの魔力は満月を浴びて強大となります。
敵が満月の夜を選んだのは、まさに自ら墓穴を掘った愚行だったのです。
敵は無数の常さんの幻を見て、どれが本物なのか混乱していました。
これが店主様の言っていた秘すれば花、常さんが隠しもった敵を圧倒する力なのです。
「雄々っ──!! ちょこざいなエルフめっ」
狒々が滅茶苦茶に腕を振り回し、無数に見える幻を薙ぎ払っています。
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