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女の人を狙った刀は、軌道をはずれて刺さっていません。戸板から生えた刀を、レオンさんが刀の鎬(しのぎ)で受け流したのです。
「何者ですか?」
危機一髪で女の人を護ったレオンさんが、戸口の向こうに問いかけました。
「……邪魔をするか」
レオンさんの問いに答えず、見えない相手が暗い声で一言返しました。
「女人を斬るのは、この私が許しません」
「……何奴だ?」
「レオン。大神流の大神レオンです」
レオンさんが名乗った途端、
〈ザッシュ──〉
再び戸板を破って、刀がレオンさんを串刺しにしたのです。
「レオンさん──!?」
僕は駆け寄ろうとすると、
「安心しな。レオンはあれくらいでくたばるヤツじゃねえよ」
と店主様が不敵な笑みで言いました。
「あなたも二刀流ですか」
レオンさんの確かな声がしたので見ると、いつの間にか抜いたもう一つの刀で、相手の刀を受けていました。ほっと安堵の息をつく僕。
「面白き奴よ。名と剣流は覚えたぞ」
低い含み笑いと共に、戸板から生えた二本の刀が消えました。凶行に彩られた銀光を残して。
「大丈夫ですかレオンさん?」
今度こそ僕は駆け寄ると、
「ご案じ召されるな。それにしても剣呑な敵でした」
二刀を鞘に収めてレオンさんが平然と答えました。
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