第一章「遺された心」一話「はじめての九一堂」

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「時は金なり、と米国の大統領も言ってるぞ。それに、ウチに無駄金は無えんだよ」 「この冷血漢め」 「うるせえ、眼鏡オンナが」  にらみ合っています。困りました。喧嘩になって店を汚しはしないかと、僕は心配です。  でも、アオネさんが言った裏の仕事とは何でしょうか?  それに店主様の写眞館は、妖怪とどんな関係があるのでしょうか?  僕はまだ、それを知りません。 「おっと、もうこんな刻限か。おいシロ、もう帰っていいぞ」  にらみ合いながら店主様が言ったので、 「それでは帰らせていただきます」  僕は頭を下げて別れを告げました。この二人をのこして大丈夫かな? 「ちょっと待ちな」  とアオネさんが屋台に走って、 「これを食べておいき」  コロッケを二つ差しだしました。 「ぼ、僕まだ、お金ありません」 「良いってことよ。それより、お姉さんコロッケください、と言ってくんな」 「お、お姉さん、コロッケください」 「善し善し」  お姉さんがくれたコロッケは、香ばしい匂いのする食べ物でした。それにとってもあったかで、なんだかお母さんの温もりがしたのです。  それをオズオズと食べていると、アオネさんがワナワナと僕の尻尾をつかみました。 「キャン!」 「ふふふ、このモフモフ感は陶酔の極みなり」  アオネさんがウットリしながら、僕の尻尾をサワサワしています。でも、コロッケをもらったから仕方がありません。
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