第一章「遺された心」一話「はじめての九一堂」

7/10
前へ
/230ページ
次へ
 次の日に掃除をしていると、またアオネさんが来店して絡んできました。 「ねえねえシロちゃん。お母さんと一緒なの? 兄弟は? お兄さんとかいないの?」  掃除をする僕のあとについて、モフモフする隙をうかがっています。 「いい加減にしねえか。シロが迷惑がっているだろうがッ」  店主様が怒っても、 「そんなことを言われても平気の平左さ」  とヘッチャラな顔をしています。 「店主様、僕は大丈夫です」  また喧嘩になりそうなので、僕は慌てて言いました。 「ほら、シロちゃんも大丈夫と言っているじゃないか」 「お前は社交辞令という言葉を知らんのか」 「この守銭奴が」 「黙れ、洗濯板オンナが」  また、喧嘩になりました。  そのとき── 「九一殿はおられますか?」  お客さんの声がしました。 「大神(おおがみ)レオンです。入りますよ」  と、入ってきたお客さんを見て、僕は吃驚しました。  墨黒色の着流しに、二刀を差した浪人の格好ですが、その髪は燃えるような金色だったからです。  無造作に伸ばした金髪の下に、鼻が高く彫りの深いキレイな顔がありました。そして、瞳が海のように澄んだ碧色なのです。 「客かと思ったら、また貧乏人のお邪魔虫が来たか」  店主様が大きなため息をつきました。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

290人が本棚に入れています
本棚に追加