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次の日に掃除をしていると、またアオネさんが来店して絡んできました。
「ねえねえシロちゃん。お母さんと一緒なの? 兄弟は? お兄さんとかいないの?」
掃除をする僕のあとについて、モフモフする隙をうかがっています。
「いい加減にしねえか。シロが迷惑がっているだろうがッ」
店主様が怒っても、
「そんなことを言われても平気の平左さ」
とヘッチャラな顔をしています。
「店主様、僕は大丈夫です」
また喧嘩になりそうなので、僕は慌てて言いました。
「ほら、シロちゃんも大丈夫と言っているじゃないか」
「お前は社交辞令という言葉を知らんのか」
「この守銭奴が」
「黙れ、洗濯板オンナが」
また、喧嘩になりました。
そのとき──
「九一殿はおられますか?」
お客さんの声がしました。
「大神(おおがみ)レオンです。入りますよ」
と、入ってきたお客さんを見て、僕は吃驚しました。
墨黒色の着流しに、二刀を差した浪人の格好ですが、その髪は燃えるような金色だったからです。
無造作に伸ばした金髪の下に、鼻が高く彫りの深いキレイな顔がありました。そして、瞳が海のように澄んだ碧色なのです。
「客かと思ったら、また貧乏人のお邪魔虫が来たか」
店主様が大きなため息をつきました。
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