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その雄叫びは狂った獣のごとく、仮庁舎ばかりか月光の煌めく粒子までも震撼させました。
『そやつはフンババという旧き魔怪ぞ』
店主様が持つ写眞器さんが告げました。
「旧き魔怪ですか!?」
『古代バビロニアに伝わる森の魔神だ。英雄ギルガメシュによって退治されたはずだが、どうやら復活したようだぞ』
「シロ、なんとかしてヤツを足止めするんだ!」
店主様が叫びました。
「雄々っ──!! エルフめ、許さぬぞっ」
でも、フンババは咆哮をあげて猛り狂い、とても六つ数えるまで止めることなどできません。
(どうすればいいんだ!?)
僕は戸惑いました。尻尾を畳んで眼を逸らしたいけど、常さんが必死にグラムサイトで頑張っています。
僕のことを騎士だと言った常さんを置いて、僕だけ尻尾を巻いて逃げ出せません。
勇気を振り絞って、飛び込もうとした矢先──
「常っ──、大丈夫か!?」
有礼さんの叫ぶ声が聞こえました。常さんの安否を気づかい、仮庁舎に見に来てしまったのです。
「有礼さん、いけません!」
常さんの注意が有礼さんに向いた瞬間、フンババは口から火の息を吐いて周囲を紅蓮の炎で包みました。
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